はじめに:久々の一杯から始まった疑問
😏 私
昨晩、飲み仲間に誘われて場末のバーに立ち寄った。何十年ぶりかにテキーラを口にしたのだが、これが意外に旨かった。
テキーラとは塩とライムでショットをあおるなんて青春の悪ノリかと思っていたが、どうも最近のテキーラは上品な香りをまとっていて、昔の荒っぽいイメージとは大違い。
バーテンダー曰く「いまテキーラは流行の最前線ですよ」と胸を張る。ところが、いくらスーパーを歩き回っても、棚に並んでいるのはウイスキーと焼酎ばかりで、テキーラは1,2本しかない。
どういうことかと首をかしげながら、酔いに任せてあれこれ調べてみることにした。
テキーラは本当に流行しているのか?
💬 ランディ君
輸入スピリッツの統計によると、テキーラの日本市場は急成長しています。
日本洋酒酒造組合の2024年データでは、テキーラの輸入量は前年比で約20%増加し、輸入スピリッツのカテゴリーでジンを抜いて1位となっています[出典:日本洋酒酒造組合 ]。
ただし、スーパーの棚に並ばないのは、日本では消費の多くがバーやレストランなど外食市場に偏っているからだと考えられます。
😏 私
なるほど。
つまり庶民の台所には届かないが、夜の繁華街ではテキーラ旋風が吹いているわけだ。
まるで都会のクラブで踊る若者が、地方の温泉街にはまだ到達していないみたいな格差構造だな。
だが、そもそもテキーラとは一体何者なのか。
私の記憶では「リュウゼツランから作るサボテン酒」などと聞いたことがあるが、どうもあやしい。
テキーラの正体:サボテンではなかった?
💬 ランディ君
正確には、テキーラの原料は「アガベ・アスール・テキラーナ・ウェーバー種」と呼ばれるリュウゼツラン科の植物です。
サボテンではなく、アロエに近い多肉植物です。
テキーラを名乗るためには、原料の糖分の51%以上をアガベ由来とする必要があります。
残り49%はサトウキビやトウモロコシ由来の糖を使っても構いません。
この場合「ミクスト」と呼ばれます。
100%アガベを使ったものは「100% de Agave」とラベルに記載され、より高品質とされます。[出典:Tequila Regulatory Council (CRT) ]
😏 私
なに⁉
半分砂糖水でも「テキーラ」と呼べるのか。なんと寛容な制度だろう。
さしずめ「国産コシヒカリ」と名乗りながら半分は外国米みたいな話だな。
昨夜飲んだのは100%アガベのボトルだったが、確かに雑味が少なく、喉にすっと入った。
あれなら昔の悪酔いイメージは払拭されるのも道理だ。
地理的表示とアメリカの例外
💬 ランディ君
さらに、テキーラは地理的表示(GI)の対象であり、メキシコの特定の州――ハリスコ州を中心に、グアナファト州やナヤリット州など限られた地域で生産されたものだけが「テキーラ」を名乗れます。
これはワインの「シャンパーニュ」やスコッチウイスキーの規制に似ています。
ただしアメリカでも、メキシコ産の原酒を輸入してボトリングする場合には「テキーラ」と表示できる特例が存在します。
これが「なぜかアメリカ産でもテキーラを名乗れる」という誤解を生んでいます。
😏 私
なんだか制度の方がややこしく酔っ払っているように見える。
メキシコの大地でしか生まれないと言いつつ、アメリカでもボトルに名前を書いていいとは、恋人はあなただけと言いながら、なぜか隣の人とも写真に写っているような奇妙さだ。
熟成度による違い
💬 ランディ君
ちなみに、テキーラには熟成度によって分類があります。蒸留後すぐに瓶詰めする「ブランコ」、2か月から1年樽で寝かせた「レポサド」、1年以上の「アネホ」、3年以上の「エクストラ・アネホ」などです。熟成が進むほど、ウイスキーやブランデーに似た樽香が増します。
😏 私
昨夜の一杯はブランコだったが、透明な液体から青い草の香りが立ちのぼり、思わず「これはメキシコの草原か」と錯覚した。
隣の席の同僚はレポサドを選び、琥珀色の液体をゆっくり揺らしていた。
あれはもう完全にウイスキーの領域だ。
どうやらテキーラは「若者が塩で煽る酒」から、「大人が静かに味わう酒」へと進化しているらしい。
世界的な市場の伸び
💬 ランディ君
実際、世界的に高品質なテキーラの需要が拡大しています。
国際ワイン&スピリッツ研究所(IWSR)によると、プレミアム以上のテキーラの売上は2018年から2023年の5年間で2倍以上に成長しました[出典:IWSR Drinks Market Analysis ]。
今後も「テキーラは次のウイスキー」と言われるほど、市場の期待が高まっています。
😏 私
ふむ。
どうやら私が長年抱いていた「罰ゲーム酒」のイメージは完全に間違っていたらしい。
100%アガベのテキーラは香り高く、熟成ものはウイスキーに匹敵する奥行きがある。
昨晩の一杯は、四半世紀ぶりの再会にして、見事に私を虜にしてしまった。
財布の中身と相談しながら、次はアネホを試してみようかと企んでいる。
まとめ
- テキーラは今や日本で最も輸入量の多いスピリッツ(ジンを抜いた)。
- スーパーでは少ないが、バーや外食市場での消費が中心。
- 原料はアガベで、51%以上使用すれば「テキーラ」を名乗れる。
- 100%アガベの方が高品質とされる。
- 地理的表示によりメキシコ特定地域で生産されたものに限られる。
- 熟成度によって味わいが大きく変わる。
- 世界的にプレミアム市場が拡大している。
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