清酒・第2話なぜ「嘘ではないのに、分かりにくい」のか――酒類業組合法 × 食品表示法が生んだ構造

1 お酒に関するあれこれ

1.分かった“つもり”になったのに、ラベルはまだ分からない

😏
第1話を読んで、清酒の定義が思ったよりずっと広いことは分かった。
アルコール添加も制度上は“想定内”。
味や品質を保証するものでもない――ここまでは、頭では理解した。

……なのに、である。
スーパーの棚で日本酒を手に取ると、相変わらずラベルの前で固まる。

純米?
吟醸?
特定名称?
GI?

「分かった気がした」のに、
選ぶ段階になると、また分からなくなる。

これはもう、私の理解力の問題ではない気がしてきた。

💬 ランディ君
その感覚は自然だと思います。
それは個々の表示が悪いのではなく、
表示を生み出している制度の目的が、そもそも揃っていないからです。


2.法律は、それぞれ「見ている相手」が違う

💬ランディ君
まず前提として、清酒を取り巻く主な法律は、
同じ方向を向いて作られているわけではありません。

・酒税法
・酒類業組合法
・食品表示法

それぞれが、違う相手を見ています。

😏
同じ酒を扱っているのに、
見ている相手が違う……?

💬 ランディ君
はい。

酒税法は、国が税をきちんと取るための法律です
酒類業組合法は、業界の秩序や取引の安定を守るための法律です
食品表示法は、消費者に正確な情報を伝えるための法律です

目的が違えば、
「何を重視するか」も違います。

😏
なるほど。
つまり――
税の世界、業界の世界、消費者の世界が、
同じラベルを別の角度から見ているわけだ。

💬ランディ君
その結果、
どれも嘘ではないが、ひとつの物語としては分かりにくい
という状態が生まれます。


3.等級制度が消えたあとに起きたこと

😏
昔は「特級・一級・二級」という、
分かりやすいランクがありましたよね。

💬 ランディ君
はい。
あの等級制度は、国が品質を一定の基準で評価する仕組みでした。
しかし、1992年に廃止されます。

😏
国が「これは良い酒です」と言うのを、やめた。

💬 ランディ君
そういう整理で問題ありません。
その結果、清酒は一気に自由化されました。

😏
自由――
響きはいいが、
「じゃあ、何を基準に選べばいいの?」という話にもなる。

💬 ランディ君
まさにそこです。
国の物差しが消えたことで、
業界側が、別の“補助線”を引く必要が出てきたのです。


4.特定名称酒という「補助線」

💬 ランディ君
そこで登場したのが、
純米酒・吟醸酒・本醸造酒といった
特定名称酒です。

😏
よく誤解されるやつだ。

💬 ランディ君
はい。
特定名称酒は、品質を保証する制度ではありません。
あくまで、製法や原料条件を整理した区分です。

😏
でも、基準文言に
「香味および色沢が良好なもの」
って書いてありますよね。

💬 ランディ君
書いてあります。
ただし、これは数値基準ではなく、
評価の方向性を示した抽象表現です。

😏
つまり、
「良好とは何か」は、
明確に定義されていない。

💬 ランディ君
その通りです。
結果として、
名称はあるが、味を保証するラベルではない
という、少し不思議な位置づけになっています。


5.原材料表示が、なぜ直感的でなくなったのか

😏
昔より、原材料表示は増えた気がする。
でも、分かりやすくなったかと言われると……。

💬 ランディ君
それは、食品表示法の影響です。
食品としての酒にも、
他の食品と同じ考え方が導入されました。

😏
情報は増えた。

💬 ランディ君
はい。
しかし、
消費者がどう理解するかよりも、
正確に書かれているかが優先されます。

😏
正確だけど、読み解くには前提知識がいる。

💬 ランディ君
その結果、
情報量は増えたが、
直感的な理解はむしろ下がった
という状況が生まれました。


6.GI「日本酒」が示していること

😏
最近よく見る「GI 日本酒」。
あれは、何を意味しているんだろう。

💬 ランディ君
GIは、地理的表示です。
簡単に言えば、
「日本酒とは何か」を後から整理し直した制度です。

😏
後から、というのがポイントだな。

💬 ランディ君
はい。
長年、広い定義のまま運用されてきた清酒に対して、
国際的な文脈も含め、
改めて輪郭を描く必要が生じたということです。

😏
制度が、現実を追いかけてきた。

💬 ランディ君
その整理で問題ありません。


7.今回のまとめ――制度がズレると、表示もズレる

😏
ここまで見てきて、
ようやく腑に落ちた。

・表示が分かりにくいのは、誰かが悪いからではない
・それぞれの法律が、違う目的で作られている
・そのズレが、ラベルの読みにくさとして現れている

💬 ランディ君
はい。
清酒の表示は、
嘘ではありません
しかし、
直感的に理解できるようにも設計されていません

😏
そして次に残る疑問は、これだ。

この表示を前にしたとき、
消費者は、どんな“思い込み”をしてしまうのか。

💬 ランディ君
次回は、
「制度ではなく、人の側」で起きる誤解を整理します。

😏
ようやく、話は
“飲む側”の頭の中に入っていくわけだ。

――第3話へ続く。

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