清酒・第3話
この表示を見たら、普通こう思う

1 お酒に関するあれこれ

――誤解してしまうのは、読み方の問題ではない


清酒の表示は読めば読むほど、疑問が増える構造

😏
酒売り場で立ち尽くしている。
第1話で「清酒の定義は思ったより広い」と知り、
第2話で「制度がズレている」とも理解した。

……理解はした。
だが、棚の前では何も解決していない。

ラベルは読める。
書いてある日本語も、数字も分かる。
それなのに、意味が分からない。

この「分からなさ」は、
知識が足りないからではない。
読めば読むほど、疑問が増える構造だからだ。


誤解① 原材料表示は「正直」だが、意味が伝わらない

😏
昔の清酒の原材料表示は、だいたい次の3パターンだった。

  • 「米、米麹」
  • 「米、米麹、醸造用アルコール」
  • 「米、米麹、醸造用アルコール、糖類、酸味料」

この並びを見ると、
どうしても、こう考えてしまう。

安い酒ほど、原材料が多い。
そして、
「糖類、酸味料」まで書いてある酒は、
何かをごまかしている気がする。

😏
これはあれか?
アルコール添加(アル添)で薄くなった味を、
糖類や酸味料で“足している”ということなのか?

でも――
原材料は使用量順に書かれていない
どれがどれくらい入っているのか、分からない。

結果、
疑問だけが残る。

💬 ランディ君
酒類業組合法の表示ルールと、
食品表示法の考え方が完全には一致していないため、
“食品として読むと意味が取りづらい表示”になります。

😏
つまり、嘘は書いていない。
でも、読み手が想像するしかない空白が、そこにある。


誤解② 「国産」と書いてあるのに、書いていないもの

😏
最近のラベルを見ると、
こう書いてあることが多い。

「米(国産)、米麹(国産)、醸造用アルコール」

……ん?

米と米麹には「国産」が付く。
でも、醸造用アルコールには付かない。

😏
え?
これはどういう意味だ?

  • 醸造用アルコールは国産じゃない?
  • 食品表示法的には“輸入扱い”ということ?
  • それとも、表示ルール上、付けなくていいだけ?

💬 ランディ君
表示上は、間違っていません。
ただし、理由はラベルからは分かりません

😏
そう。
ここでも問題は、説明がないことだ。

書いていないから、
「書けない理由があるのでは?」と勘ぐってしまう。

これも、
読む側の想像力が暴走する典型例だ。


誤解③ 「日本酒(GI)」という安心ワードの落とし穴

😏
さらに混乱するのが、これだ。

ラベルに
「日本酒(GI)」
と書いてある商品。

原材料を見ると、

「米(国産)、米麹(国産)、醸造用アルコール」

😏
……あれ?

日本酒(GI)って、
純国産の日本酒じゃなかったっけ?

💬 ランディ君
GI『日本酒』の要件は、
“日本産米を原料として、日本国内で醸造した清酒”です。
醸造用アルコールについては、触れていません。

😏
なるほど。
制度上は、何も間違っていない。

でも、
消費者の感覚ではどうだろう。

  • 「日本酒(GI)」
  • 「米(国産)、米麹(国産)」

ここまで揃っていれば、
全部が国産だと思う。

そこに、説明なしで
「醸造用アルコール」だけが並ぶ。

結果、
「え? それはどこ産?」
という疑問だけが残る。


「誤解してしまう」のは、なぜ避けられないのか

😏
ここまでの例に共通しているのは、
どれも「間違った表示」ではないということだ。

  • 法律上は正しい
  • ルールも守っている
  • メーカーがごまかしているわけでもない

💬 ランディ君
「酒類業組合法と食品表示法、
さらにGI制度が、それぞれ別の目的で作られているため、
消費者目線での“一貫した説明”が存在しません」

😏
つまり、
制度と制度の“せめぎ合い”の隙間に、
消費者が立たされている。

ラベルは読める。
だが、意味は補ってもらえない。

だから私たちは、
普通の感覚で読んで、
普通に誤解する。


今回のまとめ

😏
私たちは、日本酒を誤解している。
でもそれは、
知識がないからでも、考えていないからでもない。

  • 表示は嘘をついていない
  • しかし、説明されていない
  • 制度のズレが、そのままラベルに現れている

結果として、
「分かるはずなのに、分からない」
という状態が生まれる。

💬 ランディ君
「誤解は、構造的に発生しています」

😏
そう。
私たちは間違っていない。

ただ、
誤解する前提で、酒を選ばされているだけだ。

次回は、
この前提を受け入れたうえで、
それでもどう選べばいいのか。

ようやく、そこに進もうと思う。

――第4話へ続く。

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