果実酒(ワイン)・第2話
酒類業組合法 × 食品表示法

1 お酒に関するあれこれ

― なぜラベルは分かりにくくなったのか ―


読めば分かると思っていた

😏
ワインのラベルというものは、
ちゃんと読めば分かるようにできている――
私は長いこと、そう信じて疑わなかった。

文字は小さいが、意味は書いてある。
原料もあるし、原産地もある。
目を細めて読めば、だいたい理解できる。
……はずだった。

ところが、である。
ある日ふと気づいてしまったのだ。
読んでも、分かった気になるだけで、
実は何も分かっていないのではないかと。

💬 ランディ君
その違和感は自然です。
そもそも、酒の表示は一つの法律で作られていないからです。


酒の表示は「一つの目的」で設計されていない

💬 ランディ君
酒のラベルは、
一枚の地図のように見えて、
実は別々の縮尺の地図を重ね貼りしたようなものです。

  • 酒類業組合法
  • 食品表示法
  • 果実酒等の製法品質基準

それぞれ、守ろうとしているものが違います。

💬 ランディ君
酒類業組合法は、業界の秩序や取引の公正を守る制度です。
食品表示法は、消費者の誤認防止が目的です。

そして、果実酒を含む酒の表示は酒類業組合法に従っています。
酒類業組合法による表示義務は酒の「品目」しか定めていないため、
食品表示法の内容に似た原料表示がなされています。

😏
同じラベルに、
業界向けの都合と、
消費者向けの配慮が同居している。
これはもう、少し無理がある。


「国産ワイン」と書けた時代の話

💬 ランディ君
かつて日本では、
原料が輸入品であっても、日本国内で製品化されれば
「国産品」と表示できる時代がありました。

その結果、

  • 輸入ワインを国内で詰め替えたもの
  • 輸入濃縮果汁で醸造したもの
  • 国産ブドウ100%のワイン

これらが、
同じ棚に、同じ「国産ワイン」として並んでいた。

💬 ランディ君
原料名は、いずれも「ぶどう」です。

😏
なるほど、法律的には正しい。
しかし、消費者の頭の中では、
「国産」と「国産ブドウ」は、だいたい同義である。

このズレは、
誰の責任でもないが、
確実に混乱を生んでいた。


誤解を減らすための「製法品質基準」

💬 ランディ君
この状況を整理するために導入されたのが、
果実酒等の製法品質基準です。

ここで初めて、

  • 国産ブドウのみ → 日本ワイン
  • 国内製造だが原料は輸入 → 国内製造ワイン(「日本ワイン」も含む)
  • 海外製造 → 輸入ワイン

という区分が制度として明確になりました。

💬 ランディ君
原料の産地を、表示で区別できるようにした点は
消費者にとって大きな前進でした。

😏
たしかに、
ここだけを見ると、
ワインの表示はかなり消費者寄りになったように見える。

ところが、話はそう単純ではない。


どうしても気になる「砂糖」の不在

ワインのアルコールは、
ブドウに含まれる糖分が発酵して生まれる。
これは疑いようのない事実だ。

だからこそ、
糖度の高いブドウが評価されるのも、よく分かる。

しかし現実には、
糖度が足りない場合、
**砂糖を加えて発酵させる(補糖)**ことは
決して珍しい話ではない。

💬 ランディ君
特に国内産ブドウを原料とするワインでは、
アルコール度数調整のため、補糖が行われることが多いです。

酒税法上も果実に含まれる糖分の重量まで補糖することが認められています。

😏
法律上はワインのアルコールの半分までは補糖によっても可能なわけか?
かなりインパクトがある。

ところが、
スーパーの棚に並ぶワインの原料表示を見ると、
「砂糖」という文字は、ほとんど見当たらない。

不思議である。
あまりにも不思議で、
つい余計な勘ぐりをしてしまう。


書かれていない理由は「触れていない」から

😏
ここで、事実関係を整理しておく。

  • 果実酒の表示義務(酒類業組合法)
     → 表示義務は品目(果実酒)のみ
      砂糖を含め原料の表示は全く触れていない
  • 果実酒等の製法品質基準
     → 原料に砂糖を表示することについて、
      全く触れていない
  • GI山梨ワイン
     → 補糖量の上限は定めているが、
      表示義務には踏み込んでいない

💬 ランディ君
したがって、原料欄に砂糖が書かれていなくても、
それは違反ではありません。

😏
なるほど。
「書かれていない」のではなく、
「書く話題にされていない」のである。

これは、
隠しているのとも、
誤魔化しているのとも、
少し違う。


表示は説明書ではない

💬 ランディ君
表示は、中身を完全に説明する文章ではありません。
一定のルールに従って書かれた結果にすぎません。

😏
つまり、
ラベルは親切そうな顔をしているが、
実は必要最低限のことしか話していない。

誰かが意図的に騙しているわけではない。
しかし、
制度の目的が違うルールが重なった結果、
誤解が生まれる余地が残った。


次回への問い

😏
この構造を知ったうえで、
もう一度、あのラベルを眺めてみると、
次はどんなふうに読んでしまうのだろう。

💬 ランディ君
次回は、その「読んだ瞬間の感覚」を
正面から扱います。


次回【第3話】「この表示を見たら、普通こう思う」

誤解は、知識不足ではなく、
もっと自然なところから生まれている。

→果実酒(ワイン)・第3話に続く

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