😏 私
スーパーの酒売り場で、私はいつも少し不思議な気分になる。
ビールの缶には、なぜか「麦芽比率50%以上」だの「麦芽比率25%未満」だのと、余計な数字が書いてある。
ワイン売り場で「ぶどう比率90%以上」などという表示は見たことがない。
日本酒にも「米使用率」などとは書いていない。
なぜビールだけが、こんなにも自分の中身を数字で語りたがるのか。
これは、味の問題ではない。
もっと別の、大人の事情の匂いがする。
ビール表示がやたらと詳しい理由
💬 ランディ君
結論から言うと、その理由は酒税法です。
日本では、ビール系飲料は酒税法上「ビール」「発泡酒」「リキュール」に分類されます。
この区分は味ではなく、原料、特に麦芽の使用割合と副原料の内容で決まります。
その結果、消費者向け表示も他の酒類より詳細になりました。
😏 私
なるほど。
つまりこれは、親切心ではなく、国税当局とビールメーカーの長年の知恵比べの名残というわけだ。
黄色くて泡が出る酒を、無理やり三兄弟に分けた結果、全員が戸籍謄本を首から下げる羽目になった、という話に聞こえる。
酒税法が生んだ三兄弟
💬 ランディ君
実際、その理解でほぼ正しいです。
1990年代以降、酒税の負担を軽くするため、各社が麦芽比率を下げた商品を開発しました。
これに対応して、酒税法は
・ビール
・発泡酒
・リキュール(いわゆる第三のビール)
という区分を明確化しました。
現在の定義は国税庁の酒税法基本通達に基づいています。
出典:お酒に関する情報|国税庁
😏 私
つまり、分裂は必然だったわけだ。
仲が悪い兄弟というより、税率の違う親戚同士のようなものだ。
しかも、この親戚たちは、原料を少し変えただけで立場が変わる。
実に日本的で、実に息苦しい。
ビールと名乗るための条件
💬 ランディ君
ビールと名乗るためには、条件があります。
麦芽比率が50%以上であること。
副原料は、政令で認められたものに限られ、かつ合計で原料全体の5%以内であること。
これを超えると、たとえ味がビールでも、法的にはビールではありません。
😏 私
つまり、缶に「ビール」と書いてあれば、原料の並び順がどうであれ、麦芽は半分以上入っている。
これはもう、信頼してよい数字だ。
逆に言えば、これを書かないと信用されない世界に突入してしまった、とも言える。
発泡酒が麦芽比率を名乗る理由
💬 ランディ君
発泡酒の場合は逆です。
ビールから外れるために、あえて条件を外しています。
そのため、麦芽比率を明記しないと、税率区分が不明確になります。
酒税は麦芽比率によって段階的に設定されているため、表示が必要です。
出典:酒税に関する資料 : 財務省
😏 私
なるほど。
これはもはや、自己申告というより身分証明だ。
私は発泡酒です。
麦芽はここまでです。
税率はこの位置におります。
と、缶が自分で名乗っている。
クラフトビールの原料表示が誠実な理由
💬 ランディ君
そのため、
麦芽比率50%以下なら発泡酒。
50%以上でも、副原料が5%を超える、または規定外原料が使われていれば発泡酒。
この判断が、消費者にも分かるように表示されています。
😏 私
そう考えると、クラフトビールの表示がやたらと誠実なのも理解できる。
「麦芽、ホップ、アイリッシュモス」。
まるで、履歴書の資格欄のようだ。
これは味の説明というより、
我々は正統派です、という静かな主張なのだろう。
💬 ランディ君
はい。
クラフトビールの場合、原料をすべて記載しないと、
ビールか発泡酒かの判断ができず、税率も不明になります。
そのため、食品表示法というより、酒類業組合法と酒税法の要請で、詳細表示になっています。
😏 私
つまり、ビールの原材料表示は、
おいしさの説明ではない。
ルーツの証明であり、税務署へのラブレターなのだ。
そう思うと、あの数字たちが、急にいじらしく見えてくる。
まとめ
- ビール系飲料の詳細表示は、酒税法上の区分が理由
- ビールは麦芽比率50%以上、副原料は5%以内
- 発泡酒は麦芽比率や原料表示が税率判断に直結する
- クラフトビールの原料表示は「正統性」の主張
- 表示の親切さは、味より税の問題から生まれている
😏 私
さて、ここまで来ると、ひとつ疑問が残る。
じゃあ、どこまでがビールで、どこからがビールじゃないのか。
境界線は、本当にそんなに明確なのだろうか。
💬 ランディ君
次回は、その点を整理します。
法的なビールと、感覚的なビールのズレについて説明する予定です。
😏 私
次回、泡の向こう側を、もう一段、覗いてみることにしよう。

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